呪いの螺旋階段 第一章
夕焼けが洋館の窓ガラスを赤く染める頃、エマは古びた洋館の前に立っていた。
「本当にここが私の家になるなんて…」
エマは小さく呟いた。
亡くなった祖父の遺産であるこの洋館は、エマにとって決して懐かしい場所ではなかった。むしろ、恐ろしい記憶が染み付いた場所だった。
幼い頃、エマは祖父からこの洋館にまつわる恐ろしい話を聞かされていた。
「この洋館には、呪われた螺旋階段がある。決して、その階段を上ってはならない」
祖父の言葉は、エマの心に深く刻み込まれていた。
しかし、他に住む場所もなく、エマは意を決して洋館に住むことにした。
洋館は想像していたよりもずっと古く、そして不気味だった。長い間誰も住んでいなかったため、埃っぽく、薄暗かった。
特に、玄関ホールにある螺旋階段は、異様な雰囲気を放っていた。鉄製の手すりは錆び付き、階段は軋む音を立てた。
エマは祖父の言葉を思い出し、螺旋階段には決して近づかないように心に決めた。
その夜、エマは疲れ果ててベッドに入った。しかし、なかなか寝付けなかった。
洋館の静けさが、エマを不安にさせた。
しばらくして、エマは奇妙な音に目を覚ました。
それは、螺旋階段を誰かが上っていく音だった。
エマは心臓がドキドキした。祖父の言葉が脳裏をかすめた。
「決して、その階段を上ってはならない」
エマは息を呑み込み、音のする方へと近づいていった。
螺旋階段の前まで来ると、エマは足が震えるのを感じた。
それでも、エマは勇気を振り絞って、一段ずつ階段を上り始めた。
階段は暗く、そして長く続いていた。一段上るごとに、階段はギシギシと音を立てた。
階段を上るにつれて、エマはますます恐怖を感じた。階段の途中には、いくつものシミがあった。それは、血痕のように見えた。
そして、階段を上りきった先に、扉があった。エマは意を決して扉を開けた。
そこに広がっていたのは、信じられない光景だった。
部屋の中には、無数の人形が飾られていた。古い人形、新しい人形、大小様々な人形たちが、所狭しと並んでいた。
そして、その人形たちは、皆一様に苦悶の表情を浮かべていた。
エマは恐怖のあまり、その場に立ち尽くしてしまった。
その時、背後から何かの気配を感じた。振り返ると、そこに立っていたのは、顔のない男だった。
男はゆっくりとエマに近づいてきた。エマは悲鳴を上げ、男から逃げようとした。
しかし、男はまるで幽霊のように、エマを追いかけてきた。
エマはついに捕まってしまった。男はエマの首を締め上げた。
エマは苦しくて息ができなかった。意識が遠のいていく中、エマは祖父の言葉を思い出した。
「この洋館には、呪われた螺旋階段がある。決して、その階段を上ってはならない」
エマは後悔した。祖父の言葉を守っていれば、こんなことにはならなかったのに。
しかし、もう遅かった。エマの意識は完全に途絶えてしまった。
そして、エマは人形の仲間入りをしたのだった…。
第一章 完
呪いの螺旋階段

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