奈落の底から響く声

ホラー

奈落の底から響く声 第一章
新緑が目に眩しい初夏の候、ユウは月影村へと続くバスに揺られていた。都会の喧騒から離れ、豊かな自然に囲まれたこの村での生活に、ユウは期待を膨らませていた。
「本当に何もないところだな…」
バスの窓から見える景色は、どこまでも続く田んぼや森ばかり。高い建物は一つもなく、古い家々が点在しているだけだった。
ユウは東京の大学を卒業後、地元の企業に就職したが、人間関係や仕事のストレスに疲れ果て、心機一転、この月影村に移住してきたのだ。
村での生活は、ユウが想像していたよりも静かで穏やかなものだった。人々は皆親切で、ユウのことを温かく迎えてくれた。
しかし、村には一つだけ、奇妙な噂があった。それは、**「奈落」**と呼ばれる深い淵にまつわるものだった。
奈落は村の奥深くにある、底の見えない深い淵だ。村人たちは古くから奈落を畏怖しており、決して近づこうとはしなかった。
最近になって、奈落の底から奇妙な声が聞こえるようになったという。それはまるで亡霊たちの囁きのようであり、村人たちは言い知れぬ不安に駆られていた。
ユウは奈落の噂に興味を持ち、その謎を解き明かそうと考えた。彼は村の図書館で奈落に関する古い文献を調べたり、村人に話を聞いたりした。
しかし、奈落について知っている人はほとんどいなかった。村人たちは皆、口を閉ざし、奈落の話をしようとはしなかった。
そんなある日、ユウは村の古老から、奈落に関する意外な話を聞いた。
「奈落には、かつて生贄を捧げる風習があったんじゃ…」
古老の話によると、昔、村では豊作を祈願するために、若い娘を生贄として奈落に捧げていたという。
ユウは衝撃を受けた。そんな恐ろしい風習が、かつてこの村で行われていたとは。
古老の話を聞いた後、ユウは奈落に対する興味をますます深めていった。彼は奈落の謎を解き明かすために、奈落へと足を運ぶことにした。
奈落は村の中心部から少し離れた場所に位置していた。鬱蒼とした森の中に続く細い道を歩いていくと、やがて視界が開け、奈落が現れた。
奈落は想像していたよりもずっと深く、そして不気味だった。淵の底は真っ黒で、まるで闇そのもののように見えた。
ユウは奈落の淵に近づき、中を覗き込んだ。しかし、何も見えない。ただ、底知れぬ暗闇が広がっているだけだった。
その時、ユウは背後から何かの気配を感じた。振り返ると、そこに立っていたのは、村の巫女であるミサキだった。
「ユウさん、ここで何をしているんですか?」
ミサキは心配そうな表情でユウに話しかけた。
「奈落のことを調べているんだ」
ユウはミサキに、奈落について調べていることを話した。
ミサキはユウの話を聞くと、顔色を変えた。
「奈落には近づかないでください」
ミサキはユウに忠告した。
「奈落は呪われた場所です。近づくと、恐ろしいことが起こります」
ミサキの言葉に、ユウはますます興味をそそられた。
「一体、何が起こるんだ?」
ユウが尋ねると、ミサキは口を閉ざし、何も答えなかった。
その時、ユウは奈落の底から、何かの声が聞こえるのに気づいた。それは、まるで亡霊たちの囁きのようであり、ユウの耳に直接語りかけてくるようだった。
「帰れ…帰れ…」
声はユウにそう囁きかけた。
ユウは恐怖を感じ、奈落から逃げ出した。
村に戻ったユウは、ミサキに奈落で聞いた声のことを話した。
ミサキはユウの話を聞くと、悲しそうな表情を浮かべた。
「やはり、奈落の呪いが…」
ミサキは呟いた。
ユウはミサキに、奈落の呪いについて教えてほしいと頼んだ。
ミサキはしばらく迷った後、ユウに奈落の呪いについて語り始めた。
それは、過去の生贄たちの怨念によるものだった…。

奈落の底から響く声 第二章

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